高専ロボコン解説(明石「超」乾燥編)

明石高専Aチーム「明石『超』乾燥(あかしスーパードライ)」は、2019高専ロボコンにおいて優秀な成績を収めたロボットです。
近畿大会では、ベスト4&アイデア賞。全国大会では、ローム賞を獲得しました。

引用元:明石高専HPより

たくさんのアイデアと技術が詰まったこのロボットを徹底解説します!

※大会のルールや特徴などについては、前々回のブログをご覧ください。


1.近畿大会

2019年度の近畿大会は、台風19号の影響で前日にテストランが行えないなど、例年とは違う状況で開催されました。その中でも、明石高専Aは安定した動きで全国大会へと出場しました。

予選Bリーグ1回戦、手動機が華麗な回収を見せるも、自動機のバスタオルを掴むロックが外れてリトライ。足に絡まるなどの災難がありながらも、手動機がバスタオルで点数を稼ぐことで4-0で明石高専Aの勝利となりました。

続く2回戦、足回りに目立ったトラブルが無かったものの、またもや問題発生。シーツを干す時に必要なロックが途中で外れてしまい、大量得点をとることは出来ませんでした。明石高専Aは、その分の得点をバスタオルやTシャツの得点で稼ぐことにより、15-8で神戸高専Aに勝利。決勝トーナメントへ進出しました。

準決勝第二試合は奈良高専Aとの対戦でした。洗濯物の回収後、手動機と自動機は快調な滑り出しで得点を稼ぎにいきました。手動機は順調に動き、Tシャツを8枚掛けましたが、自動機はバスタオルを1つ干した後にシーツをかける竿に向かったところでトラブルが発生し、そのまま試合終了。 互いの高専にトラブルはありましたが、奈良高専Aがシーツを掛けたことによる得点の差は大きく、12-21で敗退してしまいました。

結果、近畿ベスト4でアイデア賞を受賞。推薦枠で全国への切符を掴みとりました。

引用元:http://robo-ken.soc.or.jp/library/lib2019.html


           大会の映像はこちらから↓

1:22:00~ 予選トーナメント1回戦(vs 府大B)

2:55:10~ 予選トーナメント2回戦(vs 神戸A)

3:29:15~ 準決勝2回戦(vs 奈良A)


2.全国大会

(表2)全国大会結果

引用元:http://robo-ken.soc.or.jp/library/lib2019.html


3.明石「超」乾燥について

明石高専のロボットの主な特徴は「フレームに足回りなどの組み方に工夫がされている」ということです。その特徴に注目して、解説していきます。

また、CS(コントロールステーション)に取り付けたカメラが試合中に撮影したロボットの写真を自動でツイートしていたんです。
もちろん、ロボコン史上初!詳しくは下のアカウントをご覧ください。

3.1 自動機

  • 自動機の機構は、洗濯物を掴むためのソレノイドを用いたロック機構と洗濯物を持ち上げるためのパンタグラフ機構から構成されています。
  • 自動機のとても速い移動を実現できたのは、ARマーカーとLidarセンサーを使用したから。
  • シーツ全体をポールにかけるために、ダンパー型機構を使っています。
  • パンタグラフ機構は、中央にガイドレールを設けることで横ブレをなくし安定した昇降を実現しています。
  • バスタオルを干す機構の根元には、ラックピニオン機構があり、洗濯物を横に広げることできれいに干しています。

(画像1)ラックピニオン

  • スリットセンサを用いて、高さ方向、移動方向のポールとの距離を一定にしています。この取り付け方にスリットセンサを壊れにくくする工夫が見られます。

(画像2)スリットセンサ

  • 昨年に引き続き、今年もノートPCを自動機に載せています。
    PCの台にも、しっかりとした固定をなすための工夫があります。

引用元:明石高専HPより

(画像3)ロボットに載せたノートPCを操作している様子

引用元:明石高専HPより

(画像4)自動機の様子とCAD

3.2 手動機

  • 洗濯物の回収機構は、2つのラックピニオン機構を用いて、洗濯物を掻き込む形になっています。
  • リミットスイッチの限界を機械の限界にしないことで壊れにくくしている。
  • 回収機構の上下のラックピニオンは、2つのリミットスイッチの物理的なセンサーで制御できるようにしています

(画像5)リミットスイッチ

  • 予選時に理論値満点を出すためのバスタオルを干す機構もついていて、これは回収と別のラックピニオン機構で展開することできれいに横干しをします。
  • ハンガーの固定部は、重力を使ってハンガーの穴とロボットの凸部ではめることでずれを少なくしています。

(画像6)ハンガー装填部

  • Tシャツを干す機構はポールにハンガーを下からエアシリンダーで押し付けることで干します。ハンガーは上から押さえつけられると開き、引っかかると固定するように自作されています。

(画像7)ハンガーの写真とCAD

引用元:明石高専HPより

(画像8)手動機の様子とCAD

4.考察

4.1 すごい点

  • 全国常連校らしい細部にまで及ぶ工夫。
  • ロボット設計の技術がCADデータや実際の動きからわかること。
  • パンタグラフ機構は、横ブレの発生や力のかけ方などの使いにくさがあります。
    しかし、それをしっかり実現させて競技を安定させることできること。
  • パンタグラフ機構は電動のメカシリンダを採用しており、先端のロック機構もソレノイドと、「エアタンクの重量をロボットに含む」や「ペットボトルタンクの禁止」などの最近の流れにしっかり対応してること。
  • アイデアとしては特別難しくはないですが、持っている技術力を駆使してアイデアを磨いているところ。
  • ロボットにまとまりがあり、各機構をしっかりと活かしていること

4.2 全国での戦いについて

  • 近畿大会から全国大会までの期間での改良がすばらしく、全国トップクラスの速さでの競技達成を可能にしていたこと。
  • 八代高専との戦いでは、今回の競技がスピードよりも美しさを求めていたことにより、美しさを追い求めた八代高専に分があったということ。

5.明石高専からの感想

5.1 反省点

  • STMが完全に安定しきっておらず、実は賭けに出ていたところがあった。なので、もっと制御的にバグを見つけ出す作業をしておいたほうがよかった。
  • 配線をもっときれいにすべきだった。
  • 全国ではCSとフィールドの高さが違うということ改めて確認しておくべきだった。
  • ロボットの性能を追求したので外装に手を付けられなかった。もっと外装にも力を入れればよかった。

5.2 良かったこと

  • マイコン-PC間通信がUSBケーブルであったため、かなり通信は安定していた。ただし、通信速度はあくまでシリアル通信なのでそこまでは出ない。
  • Lidarセンサの応答速度の速さ=位置合わせの速さ。
  • ロボットが斜めになったり、竿の足の部分でレーザーがさえぎられてLidarセンサの精度が信用できない時の、強固なバックアップARマーカー&Real Sence。
  • PC-CS間通信にIEEE 802.11a を使用し、また、PC同士であるためかなり安定した無線通信ができた。

6.まとめ

  • 自動機は大きなパンタグラフとノートPC搭載が特徴の、全国において安定した動きを見せてくれたロボットでした。
  • 手動機は4つのラックピニオンとエアシリンダーのシンプルなロボットで、ハンガーにこだわることで、スムーズな回収やTシャツとバスタオル干しを達成したロボットでした。
  • 明石高専さんのフレームの組み方から細部にまで及ぶ設計技術は、非常に参考になりました。
  • 著者もロボコンの勉強に精進し、面白いアイデアを実現させていきたいと思います。


7.謝辞

本ブログを執筆するにあたり、明石高専ロボット工学研究会の方々に力添えを頂きました。

誠に勝手ながらも、貴校のAチームのロボットを紹介・解説のご協力のおかげで執筆ができたことが、今後の高専ロボコンの発展も然り、明石高専さんのロボットの魅力の周知にも繋がったら幸いです。
私たちも、多くのことを学ばせていただきました。

ご多忙の中、本当にありがとうございました。

神戸高専ロボット工学研究会 ブログ作成者一同


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