前回の神戸高専Aチーム「勝ち勝ち山」に続き、第三弾。
大会では、本来の動きが出来なかったので、この考察で「神戸ZOO」のアイデアとロマンあふれるロボットを知っていただけると嬉しいです!
今回は、「神戸ZOO」を徹底解説します!
※出場した大会については、前回のブログをご覧ください。
1.近畿地区大会
神戸Bは予選Aリーグの1回戦で、神戸B最大の特徴とも言えるマスタースレーブ(詳細は後述)を活用し、Tシャツを干すことに成功しました。また、その試合では近畿大学高専Bのロボットが不調だったこともあり、僅か1点ながら勝利を収めました。
続く2回戦、明石Bとの対戦では、双方得点が叶わなかった為、試合終了後に審査員判定が行われました。結果は2-1。神戸Bの判定勝ちとなり、この時点で神戸Bの決勝トーナメント出場が確定しました。
決勝リーグでは、相手が高い得点力を誇る大阪府大高専Aだった事もあり、19-0と大きく差をつけられ敗退。しかし、2人がかりで操縦するマスタースレーブ機構は、当初の目標通り会場を大きく盛り上げることが出来ました。
大会を通して、得点を取ったのは手動機。自動機は手動機と合体するロボットでしたが、合体の難易度が高かったため単体でシャツとタオルを掛けるロボットとなりました。
大会本番では、足回りの不調により見せることが叶いませんでしたが、自動機に搭載されていた象の鼻の様な機構は神戸Bの魅力の1つです。
(表1)近畿地区大会結果
引用元:http://robo-ken.soc.or.jp/library/lib2019.html
優勝: 奈良高専Aチーム「飛鳥」(全国ベスト8)
準優勝: 大阪府大高専Aチーム「OSAKA OBASAN」
アイデア賞: 明石高専Aチーム「明石『超』乾燥」
2.「神戸ZOO」について
- 手動機と自動機の2台構成
- テーマは「動物園」
- 自動機のモチーフは「象」
洗濯物をかける機構は「象の鼻」、4つの昇降機構は「象の足」を模しています。 - 手動機のモチーフは「親子のカンガルー」
4本のアームは、親子カンガルーの「手」を模してます。 - 「アイデア重視」のチーム方針により、「合体」「マスタースレーブ」「しなる機構」の共立を目指しました。
3.自動機
- 歯車を使ったしなる動きをする洗濯物を干す機構、手動機を上昇させるためのエレベーター型滑車機構を搭載しています。
- 初期からこの構想であったことはアイデア出しのメモ画像からわかります。
(写真1)初期製作メモ
- 象の鼻を搭載した機構は、シャツやタオルをかける為のものです。 根元にある1つのモーターの回転を、歯車を通して各関節に伝達させることにより機構全体が滑らかにしなり、乗せた洗濯物を竿にかけることが出来ます。
(写真2)象の鼻断面図
(写真3)象の鼻
- 手動機を持ち上げる上昇機構は、角パイプを用いた自作ガイドに取り付けた紐をモーターで巻き取ることにより動作する仕組みになっています。
- 滑車機構の先に取り付けられた手動機の足場は、テクセルを使用することにより強度を確保しています。
- 合体の際に手動機が乗り込むためのスロープもありましたが、試合で使われることはありませんでした…
- 洗濯物をかける機構は稼働する予定でしたが、合体スペースを広く確保する必要があったため、固定となりました。
(写真4)スロープと設置したロボット
(写真5)自動機のCAD
3.手動機
- 洗濯物の回収及び干す機構として、マスタースレーブアームを搭載しています。
- マスタースレーブ(マスター/スレーブ方式)とは、管理・制御する側(マスター)と制御される側(スレーブ)の役割分担を行う方式のことをいいます。神戸Bの手動機では、操縦者の動きを読み取ったコントローラ(マスター)がその動きをロボットのアーム(スレーブ)に伝えるものとなっています。
- マスタースレーブアームは設計段階から4本搭載されており、2人の操縦者の両腕の「手首」「肘」「肩」「腕のひねり」に応じて、アームに取り付けられたサーボモーターを動かしています。
(写真6)手動機
(写真7)手動機CAD
(写真8)コントローラ
- 装着型のコントローラーはアルミ角パイプでフレームを組み、各関節の動きを合計10個の可変抵抗で取得しています。
- コントローラの持ち手にはジョイスティックがついており、アームを動かしながらも足回りの操縦を行えます。
- マスタースレーブは神戸高専にとって新しい技術だったため、途中段階で様々な改良が施されました。初期段階では、トルクを重視したサーボモーターによる重量の過多や、パーツ数の多さが問題となりました。そこで、適正トルク且つ軽量のモータ-を選定し付属品を利用することで、アーム1本当たり1kgの軽量化を行い、ロボットへの搭載を可能にしました。
- モータの軽量化の為にトルクが減少し、動きが鈍化した分は、ゴムバンドを付けることで緩和しました。
4.考察
4.1 良かった点
- 象の鼻型の機構の装填方法がシンプルであること
- 新しいアイデアを求めた結果、チームの技術力やチャレンジ精神の向上へ繋がったこと
- ロマンの詰まったロボットで、観客にインパクトを与えれたこと
4.2 問題点
- 大会当日、自動機が一度も走れなかったこと
- テストランの際に合体が出来なかったこと
- マスタースレーブのアームが重く、アームを自由自在に動かせないこと
- 各ハードの開発をほぼ独立した状態で進めていたため、ロボットの完成が遅れたこと
- 展開したスロープを元に戻すことができないこと
4.3 解決策
- 合体が厳しいことが分かった時点で切り替えていたら、マスタースレーブも象も互いの合体を気にせずに自由な設計ができ、もう少しまとまりのあるロボットが完成したはず。
- 各ハードの設計者との連携を保ち、ロボットを早く完成させて、両機の練習に取り組むべきだった。
- 手動機のアームの軽量化だけに集中せず、モーターの正確なトルク選定を行うべきだった。
5.まとめ
- 自動機は、本番では動きませんでしたが、しなる動きで洗濯物を干す象の鼻の機構や合体して手動機を上昇させる機構など、ロマンあふれるロボットでした。
- 手動機は、2人の操縦者がマスタースレーブアームを駆使して、洗濯物の回収、干すという、アイデアあふれるロボットでした。
- 「アイデアで勝負する」新しい神戸高専のスタイルを見せてくれるチームでした。
- 大会でロボットが動くことの大切さを学びました。
- ロマンのあふれるロボットは作るのも見るのも楽しい!!
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