高専ロボコン2019「らん♪ RUN Laundry」は、今までのルールに新たな試みが見られ、一風変わった大会となりました。
今までは、ロボコンの父 森政弘先生の「役に立つロボットを作ろうとすると発想が画一化する。現実には役に立たないルールであればこそ自由なアイディアが生まれる。」という考えの下、実用的なロボットが作られるルールは避けてきましたが、今回のテーマは「洗濯干し」。
日常に密着したこの題材に、ロボコニストはいかにして挑んだのでしょうか。
(写真1)全国優勝決定の瞬間
引用元:https://deviceplus.jp/events/kosen2019-final/
今回は、神戸高専Aチーム「勝ち勝ち山」を徹底解説します!
1.大会概要
- 高専ロボコン2016以来、「Vゴール制度」はなし
- テーマは「洗濯干し」
(公式URL:http://www.official-robocon.com/kosen/about/history/32th)
2台のロボットが洗濯物(シーツ、Tシャツ、バスタオルの3種)の回収から竿にかけるまでの一連の流れを行います。
(ルールブックURL:http://www.official-robocon.com/kosen/wordpress/wp-content/uploads/kosen_robocon_2019_rulebook_01.pdf)同点の場合「『全体的な美しさ』を基準に審査員判定」という今までに無いルールが追加
2.近畿地区大会
地方大会2回戦目の近畿地区、推薦枠を含む3枠の全国出場を懸けて、計5高専が熱戦を繰り広げました。
(表1)近畿地区大会結果
引用元:http://robo-ken.soc.or.jp/library/lib2019.html
優勝: 奈良高専Aチーム「飛鳥」(全国ベスト8)
準優勝: 大阪府大高専Aチーム「OSAKA OBASAN」アイデア賞: 明石高専Aチーム「明石『超』乾燥」
3.神戸A「勝ち勝ち山」について
3.1 自動機について
自動機の名前は「RaBiRiN(ラビリン)」。
うさぎをモチーフにしたロボットです。
ロボットには、滑車の昇降機構が2つあります。昇降機構の先には、洗濯ばさみを取り付けるアーム、Tシャツを干す機構がそれぞれついています。
滑車機構の展開後に洗濯物をかけ、洗濯ばさみを取り付けることによって、シーツとバスタオルを干すことができます。
(写真2)自動機CADデータ
竿の下を通り過ぎるだけで、Tシャツを干すこともできます。
(動画1)自動機のTシャツ干し
引用元:https://twitter.com/miniminiren22/status/1184109400954269697
手動機の名前は「ぽんちゃん」。タヌキをモチーフに装飾されています。
ロボットには、バスタオルを回収する左右アーム、Tシャツ・シーツを回収する中央アーム、Tシャツを干すための展開機構がついています。
(写真3)手動機CADデータ
決勝仕様赤ゾーン満点をとった映像はこちら
(動画2)決勝赤ゾーン満点獲得
引用元:https://twitter.com/miniminiren22/status/1184084170034823168
4.1 ロボットの各機構 解説
- 自動機の初期案は、1500㎜用の上昇展開にはラックとピニオンの上昇機構を用いていましたが、滑車機構の方が良いということで、両方の上昇展開機構を滑車にしました。
(写真4)自動機の改良前(左)、改良後(右)
- 洗濯ばさみを取り付けるアーム(自動機)は前後の誤差吸収のためにばねサスペンションを取り付けて改良しています。
(写真5)ばねサスペンション
- 洗濯ばさみは既製品をそのまま使っていましたが、パワーを補うために2連に改良し、洗濯ばさみの高低誤差を吸収する形にしています。
(写真6)洗濯バサミ
- 手動機の中央アームはしっかりとつかめるようにスポンジをつけていたましたが、設計を変更し、ポリカーボネートのみでしっかりつかめるようなアームになっています
- 手動機のサイドアームは妨害に対応できるようにアームを長くすることで、端にバスタオルを寄せられても回収できるようにしています。
- 手動機のハンガー装填部は装填しやすさを求めて、本番近くまで改良していました。
(写真7)ハンガー装填部
5.考察
5.1 良かった点
①足回りがオフシーズンにユニット化されていたので、早い段階で完成していたことと安定の走りを見せていたこと。
②自動機にもTシャツを干す機構を付けたことで、時間短縮につながったこと。
③ 足回りの形状変化に対応できたこと。
④ チームメンバーがハンガー掛けの練習、回収された洗濯物の取り込みから装填、予選、決勝での回収、干す順番の確認のような練習を行っていたので、本番に焦らず挑めたこと。
⑤使える機構を積んで、Tシャツ掛けの機構のように機構を簡素にさせようとした結果、想像以上早くにロボットが完成したこと。
⑥ 自動機の先端アームは汎用性が高く、シーツ、バスタオルの2種類のかけ方にも対応していること。
5.2 問題点
i. 滑車による展開機構は、滑車を1本のひもで展開させていたので、展開時の揺れがひどかったこと。
ii. 自動機がシーツ・バスタオルを干す時に、別の竿にかける場合は回転する必要があったこと。
iii. 滑車機構の展開時、ひもが滑車から外れた結果、部品が破損することがあったこと。
iv. ハンドが多すぎて無駄なアクチュエータが増えたこと。
v. 左右アームの歯車に3Dプリンタパーツを使っていたため、よく壊れたこと。
vi. Tシャツをかける機構にエアシリンダを用いていたため、竿と高さが合わないことが多々あったこと。
vii. 課題解決に時間が割けなかったことでロボットの安定性がなくなってしまったこと。
5.3 解決策
• iについて、1つのモーターから伸ばした軸にひもを2本取り付けるなどすればよかった。
• iiについて、回転するくらいなら、反対向きの機構をもう1つ付けてもよかった。
• ivについて、機構についてしっかりと見て無駄な部分を削って、代用方法を探す。
• vについて、アルミで作るなど丈夫なものでするべきだった。
• Viについて、その部分はモーターを使ったラックピニオン機構などの高さに影響の出ない機構で行うべきだった。
• viiについて、問題点はできるだけ見つけてすぐに直すということができるように、早くロボットを動かせる状態を作ることが大事。
6.まとめ
• 自動機は滑車を用いて展開し、先端に取り付けられたアームで洗濯ばさみを駆使して洗濯物を干していくロボットでした。
• 手動機は両サイドのアームと中央の掻き込みタイプのアームで洗濯物を回収し、シンプルな高さを合わせて通るだけでTシャツがかかる機構を使ったロボットでした。
• 問題点をいかに早く見つけれるか、それがロボコンではロボットのベストパフォーマンスを試合で出す方法ではないかと分かった。
• ヒューマンエラー防止の練習の大切さ
• ロボットは早く作る!!
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