高専ロボコンを徹底解説(VICT(OO)N編)

2018高専ロボコン「Bottle-Flip Cafe」は、確実な大量得点が求められつつも準決勝からはVゴールといった速さも重視しなければならず、「精度」と「速度」を追求した個性あふれるロボットが数多くでました。

引用元:http://www.official-robocon.com/kosen/

その中でも、安定した強さを見せつけ、会場を沸かせたロボットがいます。
それが、「神戸高専Aチーム『VICT(OO)N』」です。

引用元:https://twitter.com/KCCT_RoboKEN/status/1142225521624809472

(写真1)VICT(OO)N

中心メンバーのそばで活動していた先輩方(当時1年生)が、この大会の裏話からロボットの分析まで、徹底解説します!


1.大会概要

2019高専ロボコンの概要は、以下の通りです。

 ・今大会では、一関高専が函館高専との激闘を繰り広げ、優勝。

 ・ロボコン大賞は、最高得点60点をたたき出した熊本高専(八代)

 ・「Vゴール制度(すべてのテーブルにボトルを載せると勝利確定というルール)」が導入

 ・当時、世界中で流行していた「ボトルフリップ」を取り入れた個性的なルール

(ルール:http://www.official-robocon.com/kosen/wordpress/wp-content/uploads/2018_kosen_rulebook.pdf


    (動画1)高専ロボコン2018全国大会 公式ダイジェスト

2.近畿地区大会

近畿大会では、テストランで奈良高専Aチームが素晴らしい結果を出しつつも、大量得点型の府大高専Aチームが予選において勝利し決勝トーナメント進出。
それに続き、神戸高専A・Bチームや明石高専Aチームも確実な得点力で決勝トーナメントへと進みました。

準決勝1回戦(神戸A  vs 明石B)、神戸Aが勝利(23対3)。

準決勝2回戦(神戸B vs 府大A)、神戸Bは「ローラーの不調」が原因からか、精度を欠いてしまい僅差で敗退。敗退後、落ち込んでいる様子がありながらも、神戸Aを応援する気持ちへと変わり、優勝枠をかけた試合へと向かいます。

決勝戦(神戸A vs 府大A)、実は神戸AはBと同じく「ローラーの不調」を抱えていました。府大Aは、安定した強さで開始早々、23点を獲得。神戸高専も負けじと得点を重ね、残り45秒、ボトルは所せまい2.4mの台へと高く打ちあがり、5本目のボトルが載りました。(この時点で、28対26)急ぐ府大A、起死回生の一発を放ちましたが、失敗。ブザーとともに神戸Aの優勝がアナウンスがされました。

その後のインタビューで、「もちろん全国優勝です」と、来月の全国大会への意気込みを語り、近畿大会は閉幕しました。

引用元:http://robo-ken.soc.or.jp/library/lib2018.html
(図1)近畿地区大会トーナメント表

3.全国大会

迎えた全国大会。全国から厳しい戦いを勝ち抜いてきた選りすぐりのロボットが武道館に揃いました。
1回戦、香川高専(詫間)と熱戦を繰り広げ、辛勝。

次戦直前、神戸は都城高専のパフォーマンスの盛り上がりとは裏腹に、緊張した空気が流れていました。対戦相手は熊本高専(八代)。全国屈指の大量得点で強敵を倒してきた強豪です。

2回戦、熊本八代が安定した強さを見せつけ、開始早々、45点(2.4mテーブルに9本)を獲得。神戸高専は着実に得点を重ねるものの、10点をさらに加えた55点(下テーブルに10本追加)にはなかなか届きません。終了間際、自動機はペットボトルを放ち5点を追加するも、46点で試合終了。会場からは拍手が送られるも、先輩たちのロボコン優勝の道は絶たれました。

4.ロボット概要


 ・自動機と手動機の2台。

 ・テーマは「3匹の子豚」。

 ・自動機は、子豚をモチーフにデザイン

 ・手動機は、3種類の家をモチーフにデザイン


4.1 自動機について

競技では、2.4、1.2、1.5、1.8mのテーブルの担当です。

機構は定荷重ばねを用いたばねカタパルト機構となっています。

初期ではローラー単体で行く方針でした。

(写真2)製作初期(様子)


(写真3)製作初期(設計)


引用元:https://twitter.com/1_83m/status/1056443312666603520/photo/2

(写真4)本番の様子

地区大会後の全国に向けての改良で、すべてばね機構となりました。

(写真5)自動機(設計)

引用元:http://robo-ken.soc.or.jp/library/lib2018.html
(写真6)自動機の様子


4.2 手動機について

ロボットから伸びている3本のアームの上にわら、木、レンガの家の装飾があります。

(写真7)手動機(設計)

引用元:http://robo-ken.soc.or.jp/library/lib2018.html
(写真8)手動機の様子

競技では、手動機が一番近い、1.2、1.5mのテーブルを担当しました。

機構は、エアシリンダーでペットボトルを押し出して、テーブルに滑らすように立たせるというものです。


4.3 コントロールステーションについて

コントロールステーションは、2つあります。どちらも、移動テーブルまでの距離を測っています。

引用元:http://robo-ken.soc.or.jp/library/lib2018.html
(写真9)コントロールステーション

1つ目は、画像左のもので鍋で煮込まれている狼がもがいてる様子を表現したとかしてないとか…いわれています。

2つ目は画像右のかわいい子ブタ3匹と狼が描かれてます!!

ここで、ロボット紹介の動画をご覧ください!


         (動画2)神戸高専チーム紹介

(動画URL)https://www.youtube.com/watch?v=rKM8hVcX9Dw

5.考察

ここからは、VICT(OO)Nを制作した神戸高専生の後輩による、VICT(OO)Nの考察です。

考察1:最上級のロボットを作れた要因

・部長の方針「完璧を最初から目指すのではなく早く競技を達成できるロボットを作る」
                          ≒ アジャイル開発

引用元:https://aqu.hatenablog.com/entry/20100905/1283715639
(図2)アジャイル型開発

・ばね機構の設計者が昨年度から研究を行い、課題点を見つけ改良を行っていたことで早い段階から精度の高い機構となっていた。(練習時間に時間を回すことができる)

・地区大会から全国までの短い期間で、すべて安定性の高いばね機構への換装を行った

・手動機は簡単な機構なため、最初から安定した動きを出せた


考察2:全国での八代との闘い

・熊本高専(八代)さんは安定して大量得点をどうするのかを練った結果、唯一無二のアイデアにかなわなかった(要は八代さんすごい)。

・得点力は申し分なかったが、絶対に勝つためにはばねカタパルト機構のアイデアをもっと詰めるべきだった。

こうすればよかったのかも

・機構をただ積むよりも、大量得点とVゴールの各々に特化した形を追求するべきだった。

6.まとめ

・自動機は精度がでるばね機構を用いて、得点力、安定性を見せました。また、手動機は仕様変更の少ないロボットであり、機構がシンプルで練習にたくさんの時間を費やせるロボットでした。

・使う機構の完成度、チーム運営の方針が見事にマッチングし、ロボット作製がとても円滑に進んだ年。

・神戸は勝てるチームになるために「安定した機構」と「早い段階でのロボット完成」により、練習時間を十分にとれた。

・ロボコンで使う機構はオンシーズンに研究するのではなく、オフシーズンや改良して使うとよい。

・アイデアは無限の力を秘めています!!

神戸高専ロボ研ロボコンチーム

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